ラ・フランス

 ふるさとや人間(じんかん)霞み青山あり
 『新井奥邃著作集』の監修者である山形の工藤先生がラ・フランスを送ってくださった。箱の中にきちんと並んだラ・フランスはまだ青青とみずみずしく、出荷者の心延えか、副えられた稲穂が収穫の喜びを伝えてくれる。
 数日置いて、窪みのところが柔らかくなったら食べごろ。庖丁で皮を剥くと、皮を剥くという感じはなく、皮と実のあいだに庖丁で割って入り、滑らせていくといった具合。味覚の秋は心踊る。
 坂上り人間(じんかん)おぼろに青山あり
 ラ・フランス庖丁すべらせ待つあひだ
 芋食ってクレッシェンドの放屁せり
 柳見て座右の銘をつぶやきし

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