ご多用

 「ご多忙のところまことに恐縮ですが…」みたいな例文がある。
 だれかに教わったわけではない(記憶にないだけだろうか)けれど、いつの頃からかこの「ご多忙」を使わなくなった。
 よく言われることだが、忙の字は心を亡くすと書く。独楽のように人の三倍も四倍も働いても、いつも元気でにこにこ、はつらつとしている人もいれば、それほど動いていないのに萎びたようになっている人もいる。
 自分だったら忙しいと感じることでも、他の人ならそれほどでもないということだってあるだろう。「忙しい」は人それぞれの感じ方に負うところ大だから、「ご多忙のところ」は、意地悪い見方かもしれないが、ちょっと失礼な言い方ではないかと思うようになった。
「ご多用」なら、心のことは置いといて用事がたくさんあることだから、失礼には当たらないかと思い、これを多用するようになった。
 台風過ぽかんぽかんと体あり
 野分去り陸に上がりし鯉の池
 行き行きてまた坂来る鰯雲

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