大学生

「そうやってると、エリカを挟んでジュンが父親、クミコが母親って感じ」
「ひどいっ。身長のことで言ってるんでしょ」
「ちがうって。だったら、席、かわってみろよ」
「あ。エリカ、いま座高たかくした」
「ほら。身長じゃないって。今度は父親、母親、娘」
「あ〜あ」
「授業ないの?」
「クミのために来たのに…」
「今のなに? 大学生? コスプレ?」
「アレぐらいやって欲しいよな。せめて。エリカ、やれよ」
「また、わたし?」
「あ、どうも。せんせい、今日、行かないんですか?」
「行かない行かない。じゃ」
「失礼します。そう。ミキ先生。モチヅキ遅いなあ」
「どうする?」
「4時10分前にはここを通ると思うんだけど…」
「もう少し待ってみるか」

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セカンド・ステージ

 編集のクボッキーと都の西北の大学へ。生協書店の店長さんから、現場ならではの貴重な話をいろいろうかがった。ここがこうならほかは推して知るべしみたいな話(って、これじゃ、なんの事はわかりませんね)が多く、春風社のセカンド・ステージを睨み、ほかの情報も踏まえながら、これからゆっくり考えたい。
 帰りの電車で。吊革につかまりながらぼんやり外の景色に見とれていたら、右の腰の辺りにふんわり柔らかいものが当たった。ちょうど、ソファーに寝転がって文庫本を読むとき枕にするクッションのような、そんな感触。ちょっと生温かさまであって。
 ひょいと見ると、メタボリックなおじさんが、一つの吊革を両手で挟み、立ちながら居眠りし、くねくねと体を旋回しているのだった。ときどきシャツから飛び出た腹をぼりぼり掻いたりなどし。微笑ましい姿には違いなかったが、わたしは吊革を一つ移動し、接触を避けることにした。
 メタボリックなおじさんは依然気持ち良さそうに旋回を繰り返した。

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変化を楽しむ

 毎日同じような時間が流れていくようでも、まったく同じということはあり得ない。天気は変わるし、体調も変わる。突発的なことが起こったり、初めての人に会ったり。感覚が麻痺し変化を変化として楽しめなくならないように気をつけなければ。初めて立った赤ん坊が、膝を曲げたり伸ばしたりして、そのたびに大きくリズミカルに揺れる風景を楽しむように、仕事もプライベートも、いっそ楽しみたい。

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なんだか

 このごろテレビをつけると聞こえてくる曲で気になる歌がある。柳葉敏郎が机に向かって仕事をしている。首を傾げ、顔を歪め、左肩に右手を当て「うっ。かたまった!」。そのとき流れてくるアリナミンのコマーシャルソング。
 ♪なんだか泣けてくる
  おもわず泣けてくる
  明日もがんばろうぜって
  笑って歩き出す
 テレビコマーシャルでは、明日もがんばろうぜ、ぐらいまでしか流れない。出っ歯の柳葉のくしゃくしゃに歪んだ表情が実にいい。

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習うより

 万巻の書を読むよりも、1冊の本を読んで何か大切なものをひとつでも身につけたいと思うことがある。生まれついたものはなかなか変わらない。
 曹洞宗の板橋興宗さんは、お経は、意味が分かってよんでも分からなくてよんでもよく、意味を知るためによむのなら、寝転がって本を読むのと変わらないと言っている。門前の小僧のようなこころで、読書百遍、練功千日に禿げみたい、ん、転換ミス、失礼! 励みたい。そうすればきっと、意はおのずから通じ、気はおのずから感知されるだろう。

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同期会

 中学校の同期会の案内がきた。秋田に住む仲間が幹事を務めてくれる。ありがたい。5年前にやったときは、20代の延長のような気がしたから、中年になった自分と同期生を見くらべ、面白く可笑しかった。5年しかたっていないのに、気持ち的には、5年もたった、の感が強い。折り返し地点を過ぎたということかもしれない。
 このごろ父の何気ない発言を思い出し、反芻することが多くなった。「神仏に手を合わせることは、いいことだ」「同期会はたのしい」等々。ペロッと、そういうことを言う。日々の暮らしを豊かに愉しいものにしようという工夫があるような気がする。

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 出社時、紅葉坂の交差点で信号待ちをしていたら、すらりと脚の伸びた女性6人が坂を下りてきた。このごろはそれほど珍しくもないが、どこか違う。横断歩道のこちら側で、わたしはほんのすこし顔を前にずらし、目を凝らした。6人とも外国人女性だった。信号が青に変わり、6人が近づいてくる。ブロンドの髪が風になびき、目をみはった。大型のオートバイにまたがり停まっていたおじさんが、わざわざゴーグルを外して女性たちを目で追った。颯爽としたあの姿、撮っておけばよかった。

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