春を告げる香り

 この季節を目で見るより先に香りで気付かせてくれるものがある。沈丁花。名前を知っている数少ない花の一つ。時間に少し余裕があって裏通りなどを歩いているときに不意にその香りがやってきて驚かせられる。立ち止まり香りの主を探す。十分に咲ききってはいないのに香りは濃厚で、強く存在を主張してくるようだ。大学生の頃、仙台で初めてこの香りに驚き立ち止まった記憶がある。秋田では沈丁花にまつわる思い出はなく、雪解けの濡れた土が乾いてくると、春だなあと心が沸き立った。

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