思い出した!

 昼食の帰りしな「退院したHさんの友達、ほら、楽団の指揮者だった、だれだっけ?」と私。
「Sさんでしょ」と武家屋敷。
「Sさん。そうだ。そうか。下の名前、なんだっけ?」
「なんだっけ」
ということで、Sさんの下の名前は思い出せずにそのときは終わった。
 家に帰りテレビを見ていたら、いま流行の脳の話をやっていて、思い出せなくても、思い出そうとする努力が脳の活性化につながる、みたいなことを言っていた。Sさんの下の名前、なんだっけ? 結局、思い出せずに寝てしまった。そうしたら、夢のなかにSさんが出てきて、N専務の指示により私に言いにくそうなことをポツポツと言い始めた。N専務はそういう指示をよくする人だった。
 朝、眼が覚めたら、思い出していた。なんかいおとこ。南の海の男と書いて、なみお。そうだ。Sさんの下の名前はなみお、だった。