ダテマラ?

 以前勤めていた会社で一緒だったMさんから「ごぎげんよう」の電話があった。復刻中心の出版社でMさんは一日中コピーを取るかオペイクの仕事をしていた。オペイクというのは復刻ならではの仕事で、取ったコピーに着いた汚れをホワイトで消す作業。単調な仕事のせいか、視力のせいか(目が悪いのに、Mさんはメガネをかけたがらなかった)、Mさんはよくミスをした。「なんだよ、Mさん、またまちがってるじゃねーか」などと難癖をつけながらも、なんとなく気が合って、昼など外でよく一緒に食事をした。食事の後はコーヒー。いがぐり坊主のマスターがやっているあの店、まだあるだろうか。わたしは決まってブラジル。同行したコーヒー好きのSさんはコロンビアを注文。「Mさん、何にする?」と水を向けると、Mさん、メニューを目から5センチほどのところまで持ってきて、ううんうん唸ったかと思ったら、「だ、だ、ダテマラ!」?????????
 ダテマラ? あは、あは、あは、あはははは…。店内、爆笑のうず。ダテマラって、女だてらにそりゃないよ、Mさん。ガテマラだよ、ガ・テ・マ・ラ。
 メガネをかければいいのに、そうしないものだから、Mさんが起こした可愛いエピソードは今や伝説となり一部の人の間に残っている。耳たぶの大きな女性が髪をカットし耳が見えるようにして出社した折、Mさん、彼女に向かい「ずいぶん大きなイヤリングしてるわねえ」と大声を発した。言われた彼女、イヤリングはしていませんとも言えず、耳を隠し、目をぐるぐる回し顔を真っ赤にしていたっけ。