広告

 創業間もない頃、清水の舞台から飛び下りるつもりで全国紙に百万円分の広告を打って手ひどい目にあった。広告で本が売れる時代ではないと肝に銘じ、以来、よほどのことがない限り、本を売るための広告は控えてきた。が、今月、性懲りもなく広告を打つ。本を売るためでないこともないが、そのことばかり考えていたのでは零細企業の小社が広告を打つのは大きな危険を伴う。だから、広告で本が売れれば儲け物のつもりで、むしろ、営業の拡販材料として。出版不況の折、十年にも満たない出版社が世間に認知してもらうのは容易ではない。それでも、こつこついい本をつくってきたことを知ってほしいし、今後進もうとする進路についても見てほしい。そのための広告。広告は一過性のものだが、目に見えての売上につながらなくても、会社の認知度を上げ、次の仕事につなげるために一役買ってくれればと願うのだ。と、そんなふうに自分に言い聞かせてはみたものの、おカネが無駄にならず、費用対効果を最大限にという涙ぐましい貧乏根性のなせる業かとも思う。