むせ返る「生」

 エライ経済学者が手鏡をつかって女性の下着を盗み見ようとして警察に捕まったとき、作家でありタレントの室井佑月は、「わたしのでよければ見せてあげたのに」と、いかにも彼女らしいコメントを寄せていた。
 この経済学者、今度は電車内で女子高生に痴漢したとして現行犯で捕まった。なんでまた、と、わたしは思った。テレビのコメントも似たり寄ったり。室井佑月のコメントを思い出し、室井はブスではないし、むしろかわいい感じの人だから、半分は冗談にしても、そんなふうに言ってくれる人もいるのだから、もっと巧く事を運んで、なにも事件になるような危険を冒さなくてもよかったのに、と、そこまで考えが及んだとき、自分の浅はかさに気がついた。
 室井佑月ではおそらくダメなのだ。仮にそれが藤原紀香や吉岡美穂であっても。想像の域を出ないが、手鏡でも女子高生のパンツでも、そこにあるのは妄想がらみのむせ返る「生」であり、タレントのブランドみたいな売り物のエロスとは違う。老いていく(その先の死)人間として、むんむんするような「生」に直に触れたかったのだろう。被害者となった女性の屈辱を無視した発言であることは承知している。しかし、やるせない気がするのだ。ただ、やるせない。