誤算

 会社を興してから3年目で刊行点数が50点を突破したとき、1ヶ月の取次(トーハン、日販、大阪屋など、本の問屋)経由の注文が合わせて600冊ぐらいだったと記憶している。わが社はもとから学術図書中心の出版社だから、いわゆる流行物、季節物とはちがって、流行り廃りがない。はずだった。アイテム50で月600冊ということは、順調にいけば100で1200冊。200で2400冊。うひょうひょうひょうひょひょひょひょ… となるはずだったのだ。
 いま、そのアイテム数がいよいよ200に近づこうとしている。今日のタイトルと話の流れからしてすでにお気づきかと思うが、アイテムが200になろうとしているのに取次経由の注文は、予想に遥かに及ばない。それほど市場が冷え切ってしまったのか。はたまた学術書といえども流行り廃りがあるということなのか。
 100年読み継がれる本をつくるこころざしはこころざしとして、そのために、それが売り切れるまでに100年かかっていたら堪らない。
 専務イシバシが書店営業をして奥邃を案内したところ、ある書店の店長が、おたくの社長はよほどの資産家の生まれなんでしょうなあ。こんな、聞いたこともないような人の全集を出すんですから…と、まともに言われ、笑うわけにもいかず返答に困ったという。その話を聞き、ああ、おいらの家は資産家さ。田もあれば畑もある。秋田杉の山もある大富豪なのさとうそぶくしかなかった。とほほ。
 嘆いてばかりでも仕方がないので、『週刊読書人』に奥邃はじめ、哲学・思想関係の大広告をうちましたよ。お近くで入手可能な方は、ぜひ手にとって見てください。