装丁

 創業以来装丁にこだわってきた。小社の本は学術系のものが大半を占めるが、それでも装丁にこだわるのには理由がある。わたしの独断かもしれないが、一般的に学術系の本の装丁は殺風景だ。しかし、学問研究をこころざすほどの人というのは一般の人と比べ、本が好きという気持ちにおいて引けを取るはずがない。わたしはずっとそう思っている。学術書は中身がよければよい、というのは間違っている。心血注いだ学問研究であればあるほど、内容を演出する装丁が必要なのではないか。
 きのうのことだ。来客もあってばたばたとし、わたしはまだ見ていないけれど、メールでの出版の問い合わせがあったそうだ。前から小社が出す書籍の装丁を気に留め、気に入っていると。出版不況の波は収まらず、学術書は売れず、いろいろと情報が飛び交うにつけ、進路を誤りそうになりがちだが、こちらの意図をきちんと受け止めてくださる人がいるということは、本当に励みになる。