涼風

 長い梅雨が明けたと思ったら、一気に暑〜い夏本番。蝉はこの期を待っていたとばかりに一斉に鳴き出した。熱中症で病院に搬送される人の数も相当なもの。帽子を被っていれば安心と思いきや、どうもそうではないらしい。ときどき帽子を脱いで汗を拭き、風を入れないといけないそうだ。このまえテレビでやっていた。
 きのうの夜は暑くて寝苦しく、窓を開けたまま(網戸の状態にして。網戸の張り替えは初めてのことで手間取ったけど、事前にやっておいて良かった良かった)寝た。エアコンをつけなくても、山の上にあるわが家は風通しがいい。
 ここのところカンカン照りで目が覚めるのだけれど、今朝は、寝ている顔を涼風が撫でてくれて目が覚めた。外を見たら小雨がぱらついている。暑さに耐えている草花や木々たちも、束の間、水分をいっぱい吸いこみ涼を取っていることだろう。

ハウルの動く城

 DVDで『ハウルの動く城』を観る。こころに染みる恋愛物語で、爽やかな気持ちにさせてもらった。
 荒地に住むという魔女から魔法をかけられ90歳の老婆になった少女ソフィーが、物語の中で、(魔法がまだ解かれていないのに)ほんの少し若くなったり、中年になったり、少女に戻ったりする、その微妙な変化に眼を奪われた。
 また、ジブリ作品というか宮崎駿監督の作品には魔法使いや魔女が多く出てくるが、これは、あらゆるものに魂が宿るとするこころが自然とそういう形で表出するのかなぁとも思わされた。いずれにしろ、しょぼんとした気持ちをパッと明るくしてくれる、明るく美しく切ない作品。

微妙の風

 じりじりと暑い日が続くと、エアコンからながれる涼風がほしくなる。寝る時もスイッチオンのまま、なんてこともしばしばだった。ところが最近、エアコンが作り出す人工的な涼しさが気になり始めた。家ではほとんどエアコンを使わない。寝る前に西式の温冷浴をやっているせいか、暑くて眠れないということもない。
 休日、寝転がって好きな本を読む。うとうとしてくればソファーに体を投げ出せばよい。しばらくすると、開け放った窓から風がながれ込み、カーテンを揺らし、わたしまで届く。その風の気持ちよさと言ったら、ちょっと他では味わえない。同じ風なのに、エアコンの風と微妙に違う。

装丁

 創業以来装丁にこだわってきた。小社の本は学術系のものが大半を占めるが、それでも装丁にこだわるのには理由がある。わたしの独断かもしれないが、一般的に学術系の本の装丁は殺風景だ。しかし、学問研究をこころざすほどの人というのは一般の人と比べ、本が好きという気持ちにおいて引けを取るはずがない。わたしはずっとそう思っている。学術書は中身がよければよい、というのは間違っている。心血注いだ学問研究であればあるほど、内容を演出する装丁が必要なのではないか。
 きのうのことだ。来客もあってばたばたとし、わたしはまだ見ていないけれど、メールでの出版の問い合わせがあったそうだ。前から小社が出す書籍の装丁を気に留め、気に入っていると。出版不況の波は収まらず、学術書は売れず、いろいろと情報が飛び交うにつけ、進路を誤りそうになりがちだが、こちらの意図をきちんと受け止めてくださる人がいるということは、本当に励みになる。

いたずら仕掛人

 いたずら仕掛人kaoriさんの本を作ることになり、きのうは、2回目の打ち合わせ。最初の日と打って変わって、彼女、鮮やかなブルーの浴衣姿で現れた。いたずら仕掛人の本なので、ここで種明かしするわけにはいかないが、いたずらの中身がおしゃれ。書店に並んだ本を手に取り、ん、これはもしかして、と彼女の存在に気付いた人は驚くだろうな。おっと、ここいらで止めないと、いたずらがいたずらでなくなってしまう。

学問人

 新しい「学問人」の色校正紙が出来てきた。「学問人」は小社の総合目録。畏友・長野亮之介の描いた出色の絵に「学問人」と名付けた。冊子でなく折りたたみ式の「学問人」を広げると何とも壮観! 真理の地下水は滔々とながれ、それぞれの体験を通して汲み上げた水は、一見ジャンルは違っていても共通の輝きと透明度をもち、のどを潤し、暮らしを豊かにしてくれる。そんなことを思って名付けた。