ホヤッキー

 編集者の窪木くんがいる。週代わりの小社トップページに名前が出るようになった。「今週はクボキがお送りいたします」。本人は控え目に、漢字でなく片仮名で「クボキ」と表記している。わたしはちゃんと窪木くんと呼んでいるが、いつの頃からか、だれ言うともなくクボッキーと愛称で呼ばれるようになった。
 さて、そのクボッキーこと窪木くんだが、夏らしくバッサリ髪の毛を切ったようで、今週、涼しげな表情で出社した。頭頂部はポヤポヤッと髪が残っているが、周囲はことごとく刈り上げている。みごとだ。聞けば、バリカンでやってもらったそうだ。そうだろうと思った。
 しばらくつくづく見ていた。ふむ。似ている。似ている。なんだ。ふむ。うん。アレだアレ。ホヤだ。好きな大辞林によれば、海鞘(ほや)綱の原索動物の総称。……単体で食用とするマボヤ、群体をなすイタボヤなど多くの種類がある、とある。
 そう思って見ると、窪木くんの顔というか頭全体がますますホヤに見えてきた。もう取り返しがつかない。これから少しずつ髪の毛が伸びホヤらしくなくなっても、あの独特の味と共に刷り込まれた形状の魅惑を消し去ることは無理。ホヤッキー! 美味そうだ。