帽子

 昨年秋ぐらいから帽子を被るようになった。最初は恥ずかしく、街行く人が皆こっちを見ているような気がして過剰に意識したが、寒いときはシャツ1枚多く着ているようなものだし、日差しの強いときは日除けになる。手軽で便利。そうなってみると、被らないでは外へ出られなくなった。
 今年は帽子が流行りだそうで、トレンドに火を点けたのはCA4LAというブランだと聞いた。わたしは、わたしがトレンドに火を点けたとばっかり思っていた(笑)。CA4LAの帽子も持っている。
 ゴールデンウィークに秋田に帰ったとき、父が祖父の帽子を出してきた。パナマ帽。そういえば、百歳で亡くなった祖父は、周りが田んぼだらけの田舎に似合わずオシャレ好きな人で、シャツでもズボンでもこだわりをもっていた。パナマ帽まで持っていたとは。それも三個。被っている姿を見た記憶があるような、無いような。
 わたしが帽子を被るようになった直接のきっかけは、テレビの旅番組で帽子好きの米倉斉加年が、たまたま見つけた帽子店で好ましい帽子を二個見つけ被ったシーンを見、はぁ、帽子もいいかもな、と思ったことだったが、さらに分析してみれば、好きなダニー・ハサウェイがよく帽子を被っていて、とてもかっこよかったことがわたしの中に刷り込まれていたということに気付いた。そこ止まりだと思っていたのに、祖父の帽子好きが遺伝されていたとは思いもよらなかった。