雪道

 『北上川』でブレイクしている(今年に入って3刷!)写真家の橋本さんから、次の写真集の企画のための写真がダンボールで二つ送られてきた。あと同じくらいの量があるという。ダンボール箱を開けると、中にテーマごとのファイルがぎっしりと収められてあり、わたしはとりあえず適当に2、3のファイルを取り出して大判の写真を1枚1枚眺めてみた。
 「雪道」と書かれたファイルがあった。同じ場所で撮られたものが十数枚(もっと?)はあったろうか。建物も何もない雪道で、左にゆっくりカーブしている。角のところに街灯が1本立っていてそこだけ明るい。道の両側は除雪された雪が壁をなしており、街灯の光は届かず、黒々とした塊だ。光が当たっている場所の雪は、写真がモノクロだというのに、雪国で生まれ育った者にはなんとも懐かしくクリーミーでミルキーで優しく感じられる。ミルキー・ウェイへとつながる色、いのちを育む乳の色だ。ジョバンニが病気で臥している母のために牛乳を取りに行くとき通った細い道にも街灯が立っていた。そんなことまで彷彿とさせる、無意識が豊かに発動した写真と思われた。