若き編集者

 ただいま小社では編集者を募集している。すでに何通か書類が届き、メールによる問い合わせも来ている。編集希望というくらいだから、趣味の欄には必ず「読書」があるし、それなりに本好きなことが分かる。教師になりたい人に「なんで?」と訊くと、「子供が好きだから」という答えが多いように、編集者になりたい人に「なんで?」と訊くと、「本が好きだから」…。
 編集者は本を作るわけだから、本が嫌いでは話にならない。が、それはもう前提の話であって、理由に挙げて欲しくない気持ちがこちらにはある。こんなことを書いたら、これから応募してくる人に影響があるかもしれないが、まあ、いい。わたしの気持ちとしては、「本」というよりも「文章」に偏執狂的であって欲しい。たとえば、自分の好きな文章(詩の一行でもいい)に触れたら、アロマセラピーの香りを嗅いで気分がよくなるぐらいに感応し、ダメな文章に触れたら、逆に反感を覚えるぐらいに、目の前の文章に身体的に密着して欲しいと思うのだ。
 そういう意味も含め作文を課しているわけだが、作文だけではなかなかそこまでは分からない。お蚕さんが桑の葉を食べるように倦まず弛まず文章を読み、ゲラを通して、それ以外では得られないコミュニケートの質に喜びを感じられるような若者が欲しいし、そういう編集者に育って欲しいと思う。