ジャズ入門書2冊

 今をときめく二人の物書き、中条省平氏と寺島靖国氏がジャズ入門書を書いた。題して『ただしいジャズ入門』『たのしいジャズ入門』。さあ、あなたはどっち? こんなノリ。
 中条氏が「ただしい」で、寺島氏が「たのしい」。こんな風に書くと、中条氏が(人間として)正しくて寺島氏が(人間として)楽しいみたいになってしまうが、いや、その、本のタイトルのことでして。と、あからさまに、こう断ると、じゃあ、中条氏は(人間として)楽しくないのか、寺島氏は(人間として)正しくないのか、みたいな言い方も成り立たないわけではないが、いやはや文章を書くというのは難しい。
 ジャズについて物を言うとき、話者が有名無名を問わず、話の針は、歴史の方へ振れるか現在の方へ振れるかしがち。ちょうどバランスよく、ど真ん中で止まるというのは稀有のこと。中条氏と寺島氏はそれができる二人だと思っている。その二人に、あえて中条氏には「ただしさ」の極を、寺島さんには「たのしさ」の極を意識し書いていただいたのが今回の本というわけだ。
 綱引きみたいなタイトルだが、見方を変えれば、くるり反転、なんてことだってあり得るかもしれない。さあ、あなたはどっち?