帽子専門店

 最近帽子が気に入って、会社にも被っていくようにしている。さすがに皆さん気がついて「あら、いいじゃない。似合っているわ。どこで買ったの」などと声をかけてくれるものだから、お調子者のぼくはすぐに「川崎に辻野帽子店という老舗の帽子屋さんがあってね、種類も数もそれはそれは豊富なの。そこへ行けば必ず似合う帽子がある」とぺらぺらしゃべった。すると石橋が、「じゃあ今度連れて行ってよ」。「わたしも」と武家屋敷。ということで、きのう、営業で出かけていた石橋とは川崎駅で待ち合わせることにして、武家屋敷と二人、退社後、京浜東北線の電車に乗ってトコトコ川崎まで出向いた。辻野帽子店までは駅から歩いて五分。和服姿の女将さんがいろいろ二人に似合いそうなものをみつくろってくれ、被り方を教えてくれる。石橋はチェックのハンチング。武家屋敷はキャスケット。
 女将さんの話では、ヨーロッパの業者には、日本人に合いそうなものを選び、これこれのサイズのものをと一年前に予約するのだそうだ。自社ブランドの帽子も飾ってあるから、それについて質問すると、「職人さんもいろいろでねぇ」と顔をほころばせた。
 店を出、仲見世通りのタイ料理のお店パタヤを探したが、あるべきところに店がない。確かここだったという場所に看板はなく、それでも諦めきれずに見ていたら、二階の窓に見覚えのある絵があったので、場所は合っている。ということは…。残念だが、憶測はほどほどにして、駅から下りた地下で見たタイ料理のお店に入った。値段も手ごろ。安くて旨い。チェーン店で横浜なら伊勢佐木町にもあるらしい。この味ならほかの社員も喜ぶだろう。
 おっと。川崎の辻野帽子店はこちらです。川崎の駅に降りると、ほかの街に比べて帽子を被った人が目に付くのは、辻野さんがあるからかもしれないと思った。