武家ダンス

 『ダンテ神曲原典読解語源辞典』が完結し、著者の福島先生と奥様をお招きした。学習院大学の中条省平さんは「あれは凄い辞書だ!」と絶賛している。
 先生は歌が好きで、ご自身歌われる。社の近くの寿司屋で乾杯し、その後二台の車に分乗、一路保土ヶ谷のコットンクラブへ。酒を控えるようになってから、しばらく足が遠のいていた。ママに会うのも久しぶり。石橋がさかんに「ママ、なんだか可愛くなったわ」と感に堪えた声。ほんとだ。タバコを止め、二駅分を歩くようにしていると言っていたが…。
 二階の特別席(ここからだと畳二畳分はあろうかという大スクリーンが正面に見られる)に陣取り、まずは前座でわたしが三橋美智也の「石狩川エレジー」。福島先生は、英語、フランス語、イタリア語の歌を次々に。石橋は古いのから新しいのまでいろいろ。若頭内藤は若頭らしくエゴ・ラッピン「色彩のブルース」とかローリング・ストーンズの「スター・ミー・アップ」とか。さて、問題(!?)は武家屋敷。『ダンテ神曲〜』が完結したのが担当者としてよほど嬉しかったのか、珍しく持ち歌を次々披露している。何を考えたか若頭、勝手にサザンの「HOTEL PACIFIC」を入れたので、わたしは慌ててマイクを取り、武家屋敷には前に行って踊ってはと目で合図。なるほどね。断るのかと思いきや、武家屋敷、喜び勇んで、かどうかは定かならねど、とにかく前に出、武家屋敷以外には踊れないという、これをユニークと呼ばずして何をユニークというのかというぐらいの、なんとも(ほんとに、どう言葉で表現したらいいのか分からない)ユニーク、フリージャズみたい(タップダンスみたいなのも混合されている)な踊りを踊った。なんとも表現の仕様がないから、とりあえずわたしは「武家ダンス」と呼んでいる。先生ご夫妻も大喜び。席に戻った武家屋敷、息せき切って言葉にならない。そんなに頑張らなくてもと思ったが、真面目は武家屋敷の真骨頂。
 歌あり踊りありのささやかな出版記念パーティーは打ち解けた雰囲気で終了。階段を下りて行くと、来た時には空いていたカウンター席が客でびっしり。送って出てきた凉子ちゃんに「帽子似合うわよ、三浦さん」と言われ照れくさかった。ママも出てきて「ありがとう」。いえいえ、こちらこそ。わたしも久しぶりに大声で歌わせていただきました。