8000歩

 おはようございま〜す。おはようございま〜す。で、窓際の自分の席に着くと、武家屋敷がとことこ笑顔で寄って来た。ん、どした? 武家屋敷、おもむろに腰の辺りから何やら取り出し蓋を開けて見せてくれた。まぎれもない、それは万歩計だった。約3000歩を刻んでいる。「三浦さんは家から歩いてここまで来るのに何歩?」「約5000歩」「そっかー」「たのしそうだね」「ええ。10分以上歩くと、しっかり歩行としてカウントされるの」「ふーん」「三浦さんのは?」「おれのは、そういう機能は付いてないよ」「あ、そ」
 凡そこんな会話を交わして後、武家屋敷は万歩計を大事そうに元の位置に戻し、自分のパソコンのあるほうに歩いていった。なにやら歩く姿がくっきりはっきりしている。
 昼、食事に出た折に訊いてみた。「万歩計、付けてるの?」「もっちろん」「ふーん。うれしそうだね」「三浦さんが付け始めた頃に比べたら、それほどでもないわよ」「そかな? おれの時よりうれしそうだよ」「そんなことないって…」とは言うが、そんなことある武家屋敷であった。
 さて石橋。ヨドバシカメラの点数が余っているというので一番高い万歩計を買ったのはいいが、初期設定が複雑とかで未だに付けていないらしい。機械に詳しい愛ちゃんにでも頼んで設定してもらえばいいじゃんと言ったら、体重だとかいろんなことがバレバレになるのが嫌だとか、いまさらそんなこと関係ないかとか、逡巡している。
 JR保土ヶ谷駅構内にある三崎丸で働くおばさんは、一日店で働くだけで8000歩あるくそうだ。すげぇー! 家との往復を入れると約1万6000歩だとか。