六周年

 小社六周年の日にあたり、橋本照嵩『北上川』の出版記念パーティーを開く。今月末には銀座で写真展も。
 宴たけなわの頃、秋田の父から電話があった。2冊わたしが買って送ったのが届いたという。わたしでは分からない馬についての話をいろいろとうかがう。表紙に使われている鼻面と尻尾をロープでつながれた3頭の馬は、姿形からしてそんなに高価な馬ではないはず。本文中、博労たちが何人も眺めている馬は、いい馬だ。なぜって、尻の形がいいからさ。馬市に出された馬は1歳馬だが、どの馬も、緊張して怯えている。カメラを向けたせいではおそらくない。馬は臆病な動物で、人も馬もたくさんいる場所に来ておっかながっているのさ。それが写真によく出ている。「シャガールの馬」と名付けられた2頭も、一見親子のように見えるけれども、そうではない。大人の馬というのは毛並みで判るものだ。あれは、人間で言ったら、不安な子供同士が抱き合っている、そういう形だよ。
 父は村でも評判の馬好きで、馬の気持ちが分かると言っていたくらい。草競馬では誰にも負けたことがないらしく、自転車がわりに馬に乗っていたという。そういう父が『北上川』の馬をどう見るか、まず一番に父に見てほしかった。
 風と水、飯島耕一さんにならって天をも意識しながら、七年目の日を迎えたい。