坊主頭

 短くて一ヶ月、長くて一ヶ月半の間を置いて床屋に行くようにしている。てゆうか、枯野のような頭の毛が長くなってくると、痒い。毎日頭を(髪でなく)洗っているのに、それでも痒くなる。枯野のような頭のススキのような毛でも、伸びれば周辺に汗をかくということか。
 このごろ顔を剃ってもらうようにしている。電動バリカンで頭の毛を刈ってもらって1000円では、仕事に張り合いがなかろうと慮り、そろそろ床屋にでも行こうかと思い始めるや、わざと髭を伸ばして床屋に剃りがいを提供している。
 肌がやわらかいのに髭がけっこう濃いので、今までかかった床屋は少々だが大概皮膚を傷つけ、家に帰って鏡をよく見てみると、二、三箇所、必ずと言っていいほど血が出て小さく固まっていたものだ。ところが、いま行っている床屋は、もう何度か顔を剃ってもらっているのに、一度も血を出していない。蒸しタオルで髭をやわらかくするだけでなく、特殊なオイルもつけて剃ってくれるから、やられているほうとしては、剃刀を当てられているとはとても思えない。小さな紙片で顎を撫でられているような心地好さがある。つい眠くなる。なかなかの技だと思う。
 大学の陸上部の頃、肉離れを起こして太腿の毛を剃ったことがあった。剃った後の太腿に触り、我が身なれど妙な気がした。見事な技を持つ床屋に剃ってもらった後の顎に触れると、あの時の感触がよみがえる。我が顔なれど妙な感じ。が、家に帰って鏡を見ればやっぱり同じ顔だ。