二葉百合子

 「岸壁の母」の二葉さんである。北島先生がいくら歌がうまく、記念館まであるといったって、わたしにとってはやはり二葉さんだ。
 きのう『情熱の素』ができてきた。「夜の時代を開く7人に聞」いた話をまとめたもので、そのなかに二葉さんも入っている。インタビューのとき、二葉さんの温顔に直に触れ得た。これを役得といわずしてなんと言えばいいだろう。
 わたしが最初に買ったレコードがオリビア・ニュートン・ジョンであることは先日この欄に書いたが、レコードは買わなかったけど、同時期にテープで聴いていたのが二葉百合子だった。「岸壁の母」のあの♪は〜は〜わ〜来まし〜た〜、の歌い出しを聴くだけで目頭が熱くなった。オリビア・ニュートン・ジョンと二葉百合子とどっちが好き? と訊かれると(だれも訊かない)困る。藤原紀香と吉岡美穂とどっちが好き? と訊かれる(これも、だれも訊かない)のと同じくらい困る。う〜ん、と一人で勝手に困っている。
 それはともかく、インタビューのなかで二葉さんは、しごきにも似た厳しい父の教えにくじけず頑張った当時を思い出し、その後有名になって飛行機のファーストクラスにも乗ったけど、仕事がようやく認められ初めて二等列車に乗った時の喜びにまさる喜びはないと語った。その語り口調がまた淡々としていて、聞いているこっちもしみじみ。ますます二葉さんのファンになった。