涙三連発

 昼、テレビを付けたら愛知県にあるユニークな自然分娩の産科医・吉村正さんが出ていた。本の企画で以前お目にかかったことがある。現代医療を廃するわけではないが、必要のないかぎり極力使わないようにし、妊婦さんたちには粗食と運動をすすめる。産院裏には妊婦さんたちの共同生活のための民家まである。番組では第二子を吉村医院で産むことにした女性を取り上げていた。お産をする六畳の和室には旦那さんと三歳ぐらいだろうか娘さんが立ち会った。産声が上がるや家族そろって感動の涙に暮れたものだが、これまで二万数千件のお産に立ち会ったという吉村先生も泣いていた。何万件立ち会っても感動するのだという。自然のお産には感動があると。
 もらい泣きの涙が乾いた頃、今度は長嶋さんテレビに登場でまた涙。488日ぶりだそうだ。元気になってよかったよかった。脳梗塞(こうそく)で倒れ、つらいリハビリを一日五時間も続けたのはさすが「ミスター」というほかないが、それもファンあったればこそだろう。清原、高橋らジャイアンツの選手が守備につくとき、帽子を取って長嶋さんのいるほうへ向かい挨拶をする姿もよかった。一茂さんがずっとそばに付き添っていた。
 夜は「義経」。演出が女性名で目をみはる。静とうつぼのけなげさにまたまた涙。昼、池波正太郎が描くところの女性像に深くうなずいたはずのに、それとはまた違う女性を見せられ、こっちが本当だろうじゃないかと思わされ、グイと涙を拭った。