ベランダの豚

 われらが社屋は横浜市教育会館の三階にあり、かなり広い立派なベランダがついている。もったいないので、盆栽や観葉植物を並べて楽しんでいる。先日、春風社装丁室の愛ちゃんが、空いている鉢にハーブの種を植えたらしく、よく見ると、細かい、赤ん坊の産毛のような芽が出ている。と思いきや、日を重ねるたびに緑の色がハッキリしてきた。その若芽を見ていると、なんだかウキウキする。
 クレソンを植えようか。パセリとかさ。場所がこんだけあるんだからジャガイモやニンジンやトマトを植えようよ。ベランダがダッシュ村っていうのも面白いじゃねえか。お弁当のおかずにもなる…。そうですねそうですねそうしましょう。みな、ノリがいい。どうせだから、植物だけじゃなく動物も飼っちゃおうか。牛や馬はさすがに飼えないけど豚や鶏ぐれえなら飼えるぞ、こんだけの広さがあれば。あっちの、富士山が見えるほうに豚小屋を置くのさ。開洋亭の側に鶏小屋。驚くぞみんな。他の会社の人たちがうるさく言うようなら、ベランダで育てた野菜をお裾分けするさ。それで和解。だってそのほうが絶対楽しいもの。それから、チャボも飼っちゃう。ベランダから、せーのでチャボを放り投げたら向こうの職業訓練校の屋上に降りたりしてさ。おもしれえじゃねえか。それから孔雀も飼う。孔雀がベランダの上でバッと羽を広げたら道行く人たち驚くだろうな。なんだここは、ビルの動物園かよ…。想像するだけで楽しくなってくる。天気はいいし。