自由

 『宗像教授伝奇考』第六集の途中まで読みすすむ。面白い! 博覧強記の民俗学的知識に裏付けられた謎解きに現在の人間ドラマが重なるから良質の短篇になる。また、各篇に登場する女性が美しく儚げで魅力的。ちょっとおっちょこちょいなのも可愛い。この女性の形象は作者・星野氏の好みによるのかもしれない。
 何集目かの解説にもあったが、主人公の宗像教授は文化の伝播が国境を超えてなされたことを想定し、よく口にする。学生のころ教授に教えてもらったある女性が、謎解きに向かう教授に同行しながら、「教授はすぐ外国から来たというんだから…」と感想をもらす。今なら、国境が定められ、パスポートがなければ境を越すことはできないが、そもそも境は人間が定めたものだ。もとから国境などというものは存在しなかった。
 時間は今と比べられないぐらいにゆっくりと、しかし、水の低きに就くがごとくに自由に広がるべきところに色々なものが広がった。シルクロードはその代表的な例に過ぎないのだろう。星野ワールド満喫! 読み切るのが惜しい。