止められない!

 久しぶりに止められないマンガに出くわした。『宗像教授伝奇考』がそれ。作者は星野之宣(ほしの・ゆきのぶ)。異端の民俗学者・宗像伝奇(むなかた・ただくす)が各地に伝わる伝説の謎に挑むというもの。
 このマンガと作者を教えてくださったのは佐藤文則さん。長くアメリカにおられ、フォトジャーナリストとして名をなし、『ハイチ圧制を生き抜く人びと』が岩波書店から出ている。飯島耕一さんの詩集『アメリカ』の装丁と扉に使われた写真を撮った方でもあり、今回、小社から刊行された飯島さんの傑作短篇小説集『ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ』にも佐藤さんのカッコイイ写真を使わせてもらった。
 打ち合わせで来社された折、なんの話からそんなことになったのか思い出せないが、面白くて止められない本があるとおっしゃるから、なんの本ですかと尋ねて教えてもらったのが上の本。宗像伝奇の名が天才民俗学者・南方熊楠(みなかた・くまぐす)から取られたことからしても、このマンガの心意気が知られようというものだ。
 民俗学というと、まず柳田国男のあの独特の眠くなる文章を思い出すが、星野氏のマンガは民俗学って面白いじゃん!て思える目から鱗の内容で、謎解きに向かう宗像教授は超カッコよくスキンヘッドなのも好ましい(なぜ好ましいか、黙、分かる人には分かるということで…)。第一巻、白鳥伝説が残っている土地と鉄の産地がほぼ重なることの考察なんて、もうワクワクドキドキもの。きょうも続きを読もうっと。