ピンクな気分

 横浜の街を歩いていたら女性の着ている服、春のコート、ネクタイも、やたらとピンクが多く、目に付いた。今年の流行なのだろう。流行のものに触れていいなあと思えるということは、どこかにだれか天才がいて、今年の気分をいち早く察知しているのか。
 本で読んだか人づてに聞いたか忘れてしまったが、西陣織の有名な店主が毎年パリコレに出かけるという。その話を聞いたあるひとが、世界が違うのでは? と質問したところ、かの店主は、パリコレに出かけることでその先の流行を知る、と答えた。パリコレで発表されたエッセンスが十倍薄められて日本へ上陸し、さらに十倍薄められてその年の流行になるから、と。今はもうその話は通用しないのかもしれないが。
 もうひとつ、ピンクで思い出すのは、なんといっても岡崎京子の傑作マンガ、ワニも登場する少女の哀しく切ない物語『ピンク』。愛と資本主義の極北。今は亡き師匠安原顯さんにおしえられ読んだのが最初だった。
 ともあれ、ピンクな気分がわたしのこころにも染みてくる今日この頃である。