Archives : 4月, 2005

日がな一日

 骨が折れたので、また、医者も安静が第一というから、日がな一日飽かず外を眺めたり、右手で持てるぐらいの重さの文庫本をひらいて読んだり、二、三曲聴いて放っておいたCDを改めて聴いたりと、それなりに時間をつぶしている。
 左腕がつかえぬため、おのずと右腕、特に指先に神経が集中するのか、このまま行けば、やがて右手指先で天気予報も可能、本物の関サバか名前は関サバでもまがい物かを指先一つで感じ分けられるようになるのではないかと思えるぐらいのものだ。左腕は利かなくとも右手の指先には眼があるぞ! とでもいいたいところ。
 冗談はさておき、これぞケガの功名。片腕がつかえぬことで右手指先がどれぐらい鋭敏になりうるものか、いい機会だから試してみたい。

身のほど知らず

 ボキッ! いててててて… 折れたと一瞬思った。生ビールを一杯飲んではいたが酔ってはいなかった。高さ70センチほどのブロックの上から勢いよく道路に飛び降りたら足下が見えず、体のバランスを失って左肩から地面に落ち、しこたま打った。近くにいたひとがすぐに救急車を呼んでくれ国立病院に搬送、レントゲンを撮った結果、鎖骨骨折と判明。即入院。あいにく整形外科の担当医がおらず、詳しいことは翌日に持ち越し。応対してくれた外科の先生いわく、両手の人差し指を→←の状態にし、「鎖骨というのはこんな風になっているものですが、それが折れてこんな風になっています」と、いとも簡単に言ってのけた。「手術しなければならないでしょうか」「さあ、それは分かりません」「その場合局所麻酔でしょうか」「いえ、全身麻酔です」ガーン!!
 というわけで、揺れの激しい飛行機に閉じ込められているような気分で不安な一夜を過ごす。翌朝9時をすぎ担当医がやってきて骨折の状態を説明してくれた。手術か田舎、もとい、否かばかりを心配していたが、結論としては、すぐに手術ということでなく、左腕を固定し自然治癒にゆだねる方向で考えたいとのこと。ホッと胸を撫で下ろす。午後、タクシーで保土ヶ谷に帰る。
 冗談はさておき骨折は初めて、入院は32年ぶり、あたふた、おろおろ、不甲斐なくも驚いたが、大事には至らなかった。ゴールデンウィーク中安静にし、連休が開けたら即仕事に復帰したい。各方面の方々にご心配ご迷惑をお掛けしたことをお詫びします。ごめんなさい。会社の人にもいろいろお手数をおかけしました。

お知らせ

いつも楽しくお読みくださり、まことにありがとうございます。
諸事情により、本日の「よもやま日記」はお休みとさせていただきます。みなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、近日中に連載再開いたしますので。
それではよい連休を!(春風社)

辞書の話

 最初に買った辞書は岩波の国語辞書(だったと思う)。おそらく中学校に入った年に買ったもので、今では表紙など、もうボロボロになっている。表紙の見返しにへたくそな金釘流の文字で自分の名前が書いてある。
 分からないことばが出てきたら辞書をひくと教えられた。初めて夏目漱石の小説をひらいた時、1ページに十数個も分からないことばが出てきていやになった。辞書というのは学校の先生と同じで、訊けばなんでも知っている、あいまいなところのない、ちょっと恐い、すこし面倒くさい存在だった。
 学校を出、就職し、転職。本にかかわる仕事について、辞書が「訊けばなんでも知っている」威厳のあるモノサシのような存在ではなくなった。
 辞書というのはどれも同じと思っていたのが、そうではなく、現時点における過去の集積、まとめる人が違えば、まとめる時が違えば、内容もおのずと違ってくると知った。また、語源辞典などをひくと、こんな風に言われているけれどもよく分からないという記述にしばしば出くわす。分からないなら、辞書の辞書たるゆえんがないではないかとも思うが、落ちついて考えれば、バカボンのパパ同様、それでいいのだと思えてくる。何に関することであっても、完璧な辞書というのはどこにも存在しない。編者の数だけ辞書がある。人によって、ことばを、この世の事象を、歴史をどう見るのか違っている。
 何事によらず、知らないことを知ろうとする時の一里塚が辞書で、辞書は、その先へ分け入っていく楽しみへ後押ししてくれる。ひいてひいてひきまくる。すると、未知の山があっちにもこっちにもデンとあることに気付く。

世界遺産

 「富士山を世界遺産にする国民会議設立記念パーティー」という長い名前のパーティーに出席。会長が中曽根康弘元総理、副会長が平山郁夫東京芸術大学学長、副理事長に元の文部科学省大臣の遠山敦子氏など、そうそうたるメンバーが名を連ねている。
 『変わる富士山測候所』の版元ということで、著者の土器屋先生から声をかけていただいた。3年かけて世界遺産にしようということで盛りあがった。中曽根さんのあいさつは、政治家のそれというよりも、なにやら民俗学者か国語学者のような雰囲気があり、しみじみした声だった。ずいぶんお年を召された。
 ゲストに歌手の林明日香が来ていて「林明日香さんとともに歌う日本の歌」をいっしょに歌う。
 わたしの声はでかいので目立たぬように1オクターブ下げて歌った。1曲目「おぼろ月夜」、2曲目「富士山」。「富士山」の一番の歌詞に「かみなりさまを下に聞く」を林がマイクを通したでかい声で「かみなりさまを上に聞く」と間違えたのは可笑しかった。雷の音を上に聞くでは普通だろと思った。でも、可愛かったし一生懸命歌っていたので、よかった。なんのこっちゃ。
 新調したばかりのスーツに魚介のマリネの汁をこぼした。最悪。電車でそれと知り、ギャッ!となった。保土ヶ谷駅で電車を降り、スーパーでベンジンを買い、家に帰って布に含ませパンパンパンと叩いたら目立たなくなった。

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。