対峙

 来月刊行予定『神の箱 ダビデとその時代』の著者で、名古屋大学教授のI先生から声をかけていただき、この日曜日、春の清清しい江ノ島の海を堪能した。かつて禅僧が修行したとされる洞窟にも入った。
 岩場に突き出た茶屋で海の幸に舌鼓を打ちながら飲むビールや酒は格別。先生のほうがお客様なのに、前回もそうだが、わたしもイシバシもすっかりご馳走になり、帰りはお土産まで買ってくださり、恐縮至極。ありがとうございました。
 『神の箱』は、欧米における最新のサムエル記研究に基づき、一般の人でも興味をもってその時代に入っていけるようI先生が心血を注いだ小説だ。わたしは、小説だということでガンガン手を入れた。最前衛の研究を拠り所としていても、日本語の小説、日本語の文章ということであれば、わたしの仕事が成り立つ。また、そこでしかわたしの仕事は成り立たない。
 先生は、わたしが入れた朱を見ながら、なるほどと納得したり、ミウラ、そこはそうではないだろうよ、と、真剣勝負だったとおっしゃった。ありがたかった。わたしも原稿を前に真剣勝負だったから。こういう真剣勝負ならまたしてみたいとも先生。何度でも仕事を通じてことばを磨き自分自身を吟味したいと今度も思った。