服を買う

 会社をはじめてから服を買ったことがない。ラフに着るものは買ってもスーツは買わずに間に合わせてきた。が、丁寧に着ていても傷みは隠しようがなく、久しぶりにスーツを買うことを目的に出かけた。
 女店員が適当なサイズのものを取りに裏に回り、これというものを試着した後、丈を合わせたり針で留めてくれたりと、それはそれは甲斐甲斐しく働く。その姿を見ていてなんだか愛しく思えてきたよ。愛しく思う必要はまるっきりないのだが、きちんとした制服を着ているのに、そんなことには頓着なく、床に膝を着いて仕事をしている姿に打たれた。目が充血していた。遊び疲れかも知れないのに、感動するこころはブレーキが掛からず、ああ、なんて甲斐甲斐しく素晴らしいのだ、『はたらく横浜美人』の企画に彼女も入れようと思ったりした。