季節は巡る

 朝、出勤途中いつもの階段を下りながら、ひょいと見たら梅の花が半分ほど咲いていた。夜、仕事帰りに空を見上げたら満月だった。ポール・ボウルズの『シェルタリング・スカイ』に登場する男は、満月を眺め、生きている間にあと何回満月を見るだろうとキザなことを呟く(思っただけだったかもしれない)が、その言葉はその後の彼の人生を暗示するものだった。二月も間もなく終わり、いよいよ三月。世は卒業式、入学式のシーズン。会うは別れのはじまりで、悲しいような、なつかしいような、切ないような、でも、好きな、いい季節だ。
 李白の「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」は、惜別の詩として夙に有名だが、学校で習ってからずいぶん時が経つ。今回編集している本の中にこの詩のことが出てきて、友情について詠った詩でもあると知ってうれしくなった。