Archives : 2月, 2005

成長する役者たち

 大河ドラマ「義経」第8話「決別」を観る。遮那王が都を離れ奥州へ行くことを決意し、お徳の計らいで、清盛、母の常盤に別れを告げる。
 まず、この回でわたしは初めて清盛が清盛に見えた。照明の効果も抜群、「夢を見るには力がいるぞ」のせりふを言う渡哲也は西部警察の渡哲也ではなかった。
 驚いたのは、常盤役の稲森いずみ。成長し今は遮那王となっている我が子牛若との別れの場面でのこと。滝沢秀明演じる遮那王は、母はわたしを捨てたのだとかつて思ったことを詫びる。幾度も涙を流した夜もあったけれど、世の中のことがだんだんとわかるようになり、あれは母の捨て身の行動だったのだと気付き、ありがとうございましたと頭を下げる。常盤は、今までの苦労はその一言で報われましたと目に涙を浮かべる。さて、問題はこの後だ。
 暇乞いをする遮那王に、しばらくお待ちをと言って立ち上がる。我が子のために縫い上げた召し物を取りに行こうとするその瞬間、ちらりと横顔が見える。わずか1秒ほどのことだったと思うが、うれしさに上気する母の気持ちが満面に現れ眼を奪われた。下世話で申し訳ないが、セックスを思わせるようなエロティックで狂気の輝きに満ちている。凄い!
 成長する役者たちと演出の冴えをまざまざと見せつけられた回だった。常盤の夫・一条長成役の蛭子能収の芝居は、彼の描く絵のようにヘタウマでそれなりにリアリティーを感じさせ、好ましい。こういう成長する役者たちに育まれ、義経は滝沢義経となって平成の世に甦るだろう。それを予感させる回でもあった。役者が役になることの過程と困難をつぶさに見られるのがまた大河ドラマの魅力であるかとも感じさせられた。
 弁慶は、いるだけで、ぐわっはっはっの笑い声が聞こえてきそうで可笑しいよ。なので、○。

休肝日

 休みの日は酒を飲まないが、それ以外はだいたい飲んでいる。二日続けて飲まないことが重要との話を聞いたが、いまはそんなふうになっていない。日本酒なら獺祭、焼酎なら昆布焼酎、ビールなら一番搾りか。小料理千成には獺祭も昆布焼酎も置いてある(一番搾りはビールの定番として最初から)。たのんで置いてもらったのだ。それで美味い料理とくれば、飲まずにいられない。店主のかっちゃんが作ってくれる貝の醤油炒めがまた絶品! 酒がすすむすすむ!

発見!

 コットンクラブにくるお客さんで鶴田浩二の「街のサンドイッチマン」がめっちゃ上手いひとがいる。なんたって声が鶴田浩二にそっくり!
 出勤途中、鶴田浩二似の島田さんの歌を思い出し、♪ロイド眼鏡に燕尾服、と歌い出す。物悲しいメロディーが今日の俺の気分にピッタリだぜ、とかなんとか思いながら歌う。が、すぐに変なことになる。「街のサンドイッチマン」で始めたのに、なぜか舟木一夫の「銭形平次」になってしまうのだ。おかしいなおかしいな、と、何度繰り返しても、そうなる。
 きのう、その理由が判明した。カラオケで島田さんが歌うのをじっと聴いていた。そうしたら「ロイド眼鏡に燕尾服」の後の歌詞「泣いたらつばめが笑うだろ」のところのメロディーが「銭形平次」の「かけてもつれた謎を解く」のメロディーにピタリ一致した。そうか。そうだったのかあああああ!!! それで、重なったメロディーのところから路線が変わり、銭形のほうへ流れて行ってしまったのかあああ!!
 積年の謎が解けたようにうれしく、わたしの眼からはいつしか熱い涙が溢れていた。

帽子

 小学校二年生の女子に元気をもらった。事の次第はこうだ。
 撮影の仕事が終わり、横浜でJR横須賀線に乗り換えたときのこと。帽子を被った可愛い女の子がふたり乗ってきた。ふたりともとても可愛く、わたしもカメラマンの橋本さんも無言で眼が行った。橋本さんが「埼玉では小学生に防犯ベルを持たせているよ。すげえ音がするんだ、アレ」と言った。橋本さんは浦和に住んでいる。「へえ。そうなんだ」とわたしが言うと、おじさんふたり(われわれのことです)の話が聞こえたのか、可愛い女子のひとりが、「わたしも持ってる。ほら!」と言って、ランドセルの横にぶら下げた防犯ベルを見せてくれた。「何年生なの」と訊くと、もう一人の女の子が「二年生」ときっぱり答えた。
 横浜駅から保土ヶ谷駅までは4分。夕方のこととて車内はかなり混雑していた。保土ヶ谷駅で電車を降り、中年太りが気になるわたしは階段を一段飛ばしで勢いつけて上る。撮影機材をいっぱい担いだ橋本さんはエスカレーターで。精算機に向かった橋本さんを見遣り、自動改札機の前で待っていると、わたしの横を通り過ぎようとした帽子に眼が止まり、見れば、さっきの可愛い女の子だった。防犯ベルを見せてくれたほうの子だった。わたしにちょこんと頭を下げて自動改札機に向かった。わたしはあわてて「さ、さようなら。き、気をつけて」と言った。声が上ずって、実に間抜けであった。なんだか、初恋の人に初めて話しかけた時のように心臓がめくれ、ドキドキした。
 精算を澄ませ、戻って来た橋本さんと自動改札機を抜けながら、その話をすると、橋本さん「へえ。そう。可愛かったよな、あの子。そのうち女優になるかもしれないな。にしても、親の教育がしっかりしているのだろうねえ。いまどき、そんなふうにあいさつできる子、なかなかいないよ」
 橋本さんの大人じみた意見をぼんやり聴きながら、心臓のドキドキはまだ続いていた。

 飲んだ飲んだ。飲み始めて二時間ぐらい経ち、頭のビリビリがほどけてくる時が一番気持ちいい。あの瞬間が欲しくて飲んでるようなものだねえ。カラオケを歌うも良し、歌わぬも良し、馴染みの客と話すも良し、話さぬも良し。となると、あっという間に時は過ぎ、そろそろ閉店の時間。御殿山に向かう坂道を千鳥足でゆっくり上っていると、生暖かい風が吹いてきて季節はまさに春。ねえ! ♪おらたちの一番好きな季節だなやあ、か。だども、無情の雨こさじっぱり降ったりもするのさ。明日はまた雪だって? 三寒四温てか。
 ええと、今日の仕事は、と。親分の撮影だ。

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。