地鶏

 飯島耕一短篇小説傑作選『ヨコハマ ヨコスカ 幕末 パリ』の装丁用にと頼んだ写真を携え、フォトジャーナリストの佐藤文則氏来社。夕陽に染まる埠頭に遠く佇む男の背中をとらえたその写真は、孤独と甘美と未来を指向し、雑音を廃したキーンという澄んだ音が聞こえてくるようだ。聞けば氏は、アメリカに20年住んでいたとのことで、9.11の後、日本に戻ってきた。昨年10月に出た飯島さんの傑作詩集『アメリカ』の表紙カバーと口絵につかわれた写真も佐藤氏の手になるもの。
 これは素晴らしい本になるとの予感!
 夕刻、前の仕事が伸びたとかで、2時間遅れで旧友にして写真家の橋本照嵩氏来社。平沢豊写真展‘OTHER VOICES’の時に宗教学者の中沢新一氏と話している写真を貰う。中沢氏に身振りを交え熱弁をふるう姿が我ながら可笑しい。
 撮影の仕事で来てもらったのだが、遅いし、翌日(すなわち今日)改めて、ということにし、急遽何度めかの新年会を開くことに。
 橋本さんを見ていると、つくづく地鶏っぽいなあと思うのだ。彼がいると、体の底がなんだか沸き立ってくる。すなわち、コケコッコーは都会のオノマトペ。地鶏の鳴き声を片仮名表記するなら、オエオッオオオオオオオオオッ!!! といったところか。元気が出る。だから、思わず、オエオッオオオオオオオオオッ!!!
 ギョロ眼をグルリと回し、口をすぼめてうひょひょひょひょひょ…と笑うのなども、妖怪っぽくって、いいんだな。