ホーミタイ

 年末、サザンオールスターズの新曲が街から流れてきて、お、耳に残る覚えやすい曲だなと思っていたら、だんだんと耳から離れなくなった。昨年フジテレビで放映された『大奥 第一章』の主題歌とかで「愛と欲望の日々」がそのタイトル。
 ドラマのほうは見ていないので何とも言えないが、歌は、メロディーはノリが良くても、歌詞のほうは桑田さんらしくちょっと退廃的でちょっとエッチ。「東京」もそうだったが、最近の桑田さんの歌詞は、地球外から人間の蠢きを慈しんで捉えているような切なさが感じられる。
 一番の歌詞は、Going up to “狸穴天国”で始まる。桑田さんはこれを「まみあなパラダイス」と読ませている。耳だけに頼るなら、ゴーイナプタまみあなパーラダイとしか聞こえない。「まみ」を『大辞林』で引くと、「アナグマの異名。また、タヌキ。」と出ている。狸穴=まみあな、という語をつかんだ時に、この歌の歌詞もメロディーも大きくは世界も決定付けられたのではないだろうか。
 “ホーミタイ”はサザンの歌にはよく登場するフレーズで、普通なら、Hold me tight の意味を当て、そう発音している。ところが「愛と欲望の日々」では、Hold me tight ではなく「阿呆みたい」。
 それなら「阿呆」の「阿」はどうなるのかといえば、これが巧く出来ている。この箇所の歌詞一行を丸まる引用すると、「嗚呼 愚痴など吐いたら阿呆みたい」である。「吐いたら」の「ら」がraで、「阿呆」の「阿」と同じ a音でつながる。だから、「阿呆みたい」もホーミタイでいいのだ。巧い! さすが! こういう工夫が独特のリズムとノリのよさを生むのだろう。
 でも、ほんとこの世はホーミタイ。Hold me tight も阿呆みたいも。