大阪教育大学ワイン

 悩みを抱える同僚や友人、教え子を励ますために、大阪教育大学教授の古市久子さんが5年前から送り始めた絵手紙48枚をカラーで収めたエッセイ集『あしたのあなたへ』を過日小社から刊行したが、その古市さんから、ワインを贈られた。しかも4種類!
 大学芋は聞いたことがあるし食べたこともある。好きな食べ物だ。あのちょっとどろりとした飴の部分が固まっているところも美味いし、なかのほくほくの芋が現れ、飴と一緒に舌を刺激してくるのもまた愉しい。大学芋。
 が、大学ワインというのは初めて。
 ラベルに「大阪教育大学ワイン」と書いてある。どこかで見たことのある字。古市さんの字だ。和紙のラベルに書かれた文字が楽しげに踊っている。だけでなく、彼女の絵手紙の中から4枚選ばれ、ラベルに使用されている。うち2枚は、本書に収録されたもの。
 ちょうど、『変わる富士山測候所』の編著者で江戸川大学教授の土器屋由紀子さんが、ゲラの最終チェックにみえられたので、区切りがついた後、先生を交え、みんなでワインをいただいた。
 美味しいワインを飲みながら、なんだか、こみ上げてくるものがあった。
 大学は今、一部を除いてだんだんと学生数が減り、大学本来の研究や教育がままならないところが多いと聞く。しかし、先生たちの中には、たとえばワインづくりにこだわり、知恵を出し合い、この世知辛い世の中へ出ていった卒業生たちへの贈り物を考える人もいる。70年つづいた測候所の有人観測が無人化される期にあたり、学生を巻き込み、富士山測候所で働いた人にインタビューし、測候所の有効利用を模索し本にまとめようという人もいる。出版の動きが気象庁の方々へもつたわり、望ましい波及効果が生まれてきそうだとの話も聞いた。本の編集に関わった学生の半数はまだ就職が決まっていないそうだが、就職活動もしながら、カネにはならぬ就職にも直接つながらぬ本づくりに関わったことが、彼女たちに何らかプラスになると信じたい。なってくれと祈る気持ちだ。
 本が出来たなら、そのころ彼女たちの就職が決まっているかどうかはわからないけれど、「大阪教育大学ワイン」で祝杯をあげたい。